深圳ロボットバレー最前線―シリコンバレーと並び立つ未来都市の姿
おはようございます。深圳在住の吉川です。
前回のレターでお伝えした通り、先週から我が家に住み込みのお手伝いさんが加わり、育児と家事をサポートしていただけることになりました。おかげで、夫婦ともにようやく本業に集中できる時間を持つことができ、心にも余裕が生まれています。
子育てと仕事を両立されているすべてのお父さんお母さんに、改めて心からリスペクトを抱くとともに、中国という土地で親の力を借りずに育児と仕事を両立する大変さを、身をもって痛感した日々でもありました。ちなみに、家事もお任せできる今の生活は、まるで小中高生時代に戻ったかのような感覚で、久しぶりに「仕事に全振りできる」ありがたさを噛みしめています。
さてさて、先日、深圳で開催されたロボット展示会を訪問する機会を得ました。そこに集まっていたのは、まさに今、世界で最も注目されている「深圳ロボットバレー」の中心企業たちです。展示されたプロダクトは単なるショーケースではなく、すでに市場投入されている製品ばかりで、エンジニアたちの技術への情熱と、社会実装への強い意志をひしひしと感じることができました。
また、「日本のKOLでロボットの日本展開の相談や深圳のロボット企業との協業の相談を受けている」と伝えた結果、深圳ロボット協会のサポートも受け、現地企業との密な交流を実現できたことにより、展示会でよくある単なる名刺交換を超えたリアルな現場感を得ることができました。何事もアピールできることは言ってみる事が大事ですね。本稿では、深圳ロボットバレーがどのようにして今の姿を築いたのか、そしてシリコンバレーとの比較を通じて見えてきた深圳ならではのイノベーションモデルを、体験に基づいてお伝えします。
深圳に生まれた「ロボットバレー」
深圳市南山区に位置する「ロボットバレー」は、留仙大道沿いに広がる細長い谷地に形成されています。陽台山と塘朗山の間に自然にできたこの地形は、深圳の中でも珍しい「坂道」が続くエリアであり、平坦な土地が多い深圳市内では異色の存在です。谷という言葉がここには本当にしっくりきます。
わずか10kmほどのこの狭い地域に、数百社のロボット関連企業がひしめき合っています。たとえば、先週ご紹介したロボットマラソンで優勝した人型ロボット「天工Ultra」を開発したUBTECH(優必選)、協働ロボットのパイオニア企業であり上場企業でもあるDOBOT(越疆科技)、配膳ロボットで世界中の飲食店に進出しているPUDU(普渡科技)、そして言わずと知れたドローン世界シェアNo.1のDJI(大疆)など、いずれも世界市場で名を馳せる企業がこの谷から育っています。

ロボット関連企業はなんと5万社超。
UBTECH(AI人型ロボ)、DJI(ドローン)DOBOT(精密アーム)、Robosense(SLAMセンサー)、PUDU(配送ロボ)、NARWAL(家庭ロボ)など注目企業が集まっています。
実は私自身もかつてこのエリアに住んでいたことがあり、身をもってこの「理系メガネ男子天国」とも言える独特な雰囲気を体感してきました。カフェやシェアオフィス、大学キャンパス周辺では、日夜ハードウェアスタートアップの若き創業者たちがノートPC片手に議論を重ねる姿が日常風景となっており、まさに現代の「ものづくりのフロンティア」と言える場所でした。ロボットとあまり関係ないですが私の妻と出会ったのも実はロボットバレーです。
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- 産学研連携が生む独自エコシステム
- シリコンバレーとの違い
- 展示会で見た、ロボットバレーの実力
- グローバル展開を目指す深圳勢と未来への可能性
- おわりに
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