中国AIエージェント市場に激震、Skywork Super Agentsとは何者か─“卷王”が切り拓く次世代ビジネスと日本企業への示唆
おはようございます。中国・深セン在住の吉川です。先週は少し特別な機会があり、湖北省西端の少数民族の街「恩施」、さらにその西に位置する「利川(リチュアン)」市に滞在しておりました。各国から集まった外交官や旅行会社の方々、モデル、インフルエンサーなどが一堂に会する「China Travel」のイベントにご招待いただき、中国の多面的な魅力を改めて学ぶ貴重な経験となりました。
さて今回は、現在PRのご依頼をいただいている、中国発のAIエージェント「Skywork Super Agent」についてご紹介いたします。私自身も実際に操作しながら、その使い方を学んでいるところです。
せっかくなので、このニュースレター自体もSkywork Super Agentを使って作成してみました。文章生成や情報整理の精度、そして操作の直感さなど、その実力をぜひ最後までご覧いただき、ご体感いただければと思います。
文末には招待リンクもご用意しておりますので、ご興味のある方はぜひ登録して試してみてください。
それでは、どうぞお楽しみください。
中国の人工知能市場において、AIエージェント(中国語で「智能体」)分野が急速な発展を遂げ、熾烈な競争が繰り広げられています。特に最近、中国のテクノロジーメディア凤凰网科技の記事『Agent又来了一个卷王』で「卷王」(市場を席巻する圧倒的強者、ゲームチェンジャーの意)と評された昆仑万维(Kunlun Tech)の「Skywork Super Agents」は、その象徴的な存在と言えるでしょう。本稿は、このSkywork Super Agentsの登場を軸に、中国AIエージェント市場の最新動向、核心的な競争要因、そして日本企業にとってのビジネスチャンスや留意点について、深い洞察と実用的な示唆を提供することを目的としています。
Skywork Super Agentsと昆仑万维の紹介
昆仑万维は、もともとゲーム事業で成長を遂げましたが、近年はAI分野への大胆な事業転換を進めているテクノロジー企業です。同社は、Operaブラウザなどの海外事業も展開しており、グローバルな視点も持ち合わせています。その昆仑万维が2025年5月22日に発表したSkywork Super Agentsは、オフィス業務の効率化を主眼に置き、文書作成、プレゼンテーション資料作成、Excel処理から、ポッドキャストやウェブページの生成に至るまで、マルチモーダルなコンテンツ生成能力を持つ最新のAIエージェントです。昆仑万维の会長兼CEOである方汉氏は、このSkywork Super Agentsを、実用性を徹底的に追求し、AIの恩恵を一般ユーザーに届けるための戦略的プロダクトと位置づけています。
本稿の構成と分析スコープ
今回のニュースレポートでは、主に前述の凤凰网科技の記事及び方汉CEOへのインタビュー内容、そして関連する中国ビジネストレンドに関する公開情報や業界レポートを参考に、Skywork Super Agentsの技術的特徴、市場へのインパクト、そして中国AIエージェント市場全体の競争構造を多角的に分析します。具体的には、まず中国AIエージェント市場の最新動向と、その中でSkywork Super Agentsがどのような位置づけにあるのかを解説します。
次に、Skywork Super Agentsが「卷王」と評される理由を技術的側面と市場インパクトから深掘りし、方汉CEOの戦略的洞察も交えて考察します。続いて、現在のAIエージェント市場における主要な競争ポイントを整理し、最後に、これらの分析を踏まえ、日本企業がこの急速な変化から何を学び、どのように対応していくべきかについて提言を行います。
中国AIエージェント市場の最新動向と「Skywork Super Agents」の位置づけ
Agent技術の進化と中国市場の概況
中国におけるAI Agentの発展経緯と現状
2023年以降、大規模言語モデルの飛躍的な進化を背景に、AIエージェント技術は中国で急速な進展を見せています。AIエージェントは、単にユーザーの指示に応答するだけでなく、自律的に環境を認識し、計画を立て、タスクを実行する能力を持つことから、次世代のAIアプリケーションの中核として期待されています。調査会社のレポートによれば、中国のAIエージェント市場規模は2023年に554億元に達し、2028年には年平均成長率(CAGR)72.7%で8,520億元に拡大すると予測されています(头豹研究院『2024年中国AI Agent行业研究』)。
現在の主要な技術トレンドとしては、以下のような点が挙げられます。
-
自律性の向上:より複雑なマルチステップのタスクを、人間の介入なしに計画・実行する能力。
-
マルチモーダル対応:テキストだけでなく、画像、音声、動画など多様な情報を処理・生成する能力。
-
特定タスクへの特化:汎用的な能力に加え、特定の業務や業界ニーズに深く対応する専門性。
-
Deep Research能力の統合:広範な情報源から信頼性の高い情報を収集・分析し、アウトプットの質を高める能力。
主要プレイヤーと開発動向
中国のAIエージェント市場では、既存の巨大テック企業と新興スタートアップが入り乱れて激しい開発競争を繰り広げています。主要プレイヤーとしては、以下のような企業が注目されます。
-
百度(Baidu):「文心(ERNIE)」大モデルを基盤とした「文心智能体平台 AgentBuilder」 (百度文心智能体平台) を提供し、開発者が容易にAIエージェントを構築できる環境を整備しています。
-
アリババ(Alibaba Cloud):「通义千问(Tongyi Qianwen)」モデルを核に、多様な業界向けのAIエージェントソリューション開発を推進しています。
-
テンセント(Tencent):ゲームやソーシャル分野での強みを活かし、エンターテイメントやコミュニケーション領域でのAIエージェント活用に注力していると見られます。
-
昆仑万维(Kunlun Tech):本稿で詳述するSkywork Super Agentsで市場に大きなインパクトを与えています。
-
注目スタートアップ:凤凰网科技の記事でも言及されたManus AIやDeepSeek AIなど、独自の技術やアプローチで急速に存在感を高めている企業も多数存在します。Manus AIは、その汎用性と実行能力の高さで、招待コードが高額で取引されるほどの人気を博しました(note 吉川真人「招待制から一気に開放へ、ManusがAIエージェントを一般公開」)。
各プレイヤーは、汎用型エージェントで幅広いユーザー層を狙う戦略と、特定用途に特化したバーティカルなソリューションで専門性を追求する戦略を使い分けています。また、BtoB市場における業務効率化支援と、BtoC市場における新たなユーザー体験の創出の両面で開発が進められています。