閉店の波の裏で伸びる中国ニューリテール3社の現在地
おはようございます。中国深セン在住の吉川です。
1カ月ぶりに中国に戻ってきて、家の近くのお店をいくつか回ってみたら、小さな店が気づけばまとまって閉店していました。看板はそのまま、内装も途中まで残っているのに、もう人の気配がない。深センはもともと新陳代謝が速い街ですが、今回は特に「決断が早い」というより「維持が難しい」側の速さを強く感じました。
この変化を景気だけで説明すると、話はきれいにまとまります。ただ現場を歩くほど、閉店の連鎖と同じ時間軸で、別の種類の勢いも走っているのが分かります。店舗数を増やし、売上を伸ばし、しかもファンを増やしている企業がある。しかもそれは、派手なデジタル演出で勝っているというより、供給網と運営の地味な積み上げで勝っているケースが多いです。
今日は中国のニューリテールを、サムズクラブ中国、永輝、フーマフレッシュの3社で整理します。クイックコマースが当たり前になった中国で、小売がどう変形し、どこに競争力が溜まっていくのか。ここを追っていきます。
閉店が増える局面では、店側が負けた理由よりも、勝ち残るために必要な条件のほうが先に変わります。似たような商品を似た価格で並べるだけだと差が出ない。差が出ないのに家賃と人件費は重い。さらに中国の場合、スマホで注文して短時間で届くクイックコマースが日常に入り込んでいます。つまり店舗は、売場であると同時に、配送の起点としても設計されます。ここに対応できないと、真面目にやっている店ほど苦しくなります。
だからこそ、伸びている企業は「売り方」をいじるより先に、「誰を顧客にするか」「供給網と配送網をどう組むか」「店に来る理由を何で作るか」を組み直しています。三社の違いは、まさにそこに出ています。
サムズクラブ中国は会員制と大型店で生活圏を取りにいく
サムズクラブは、ウォルマート傘下の会員制の倉庫型店舗です。年会費を払う会員を前提に、まとめ買いしやすい容量、独自商品、品質と価格のバランスでリピートを作るモデルです。日本だとコストコが分かりやすい参照先ですが、中国のサムズクラブは、店舗拡大とデジタル運用の密度がかなり高いところが特徴です。
実はうちも会員で、正しくは奥様が会員になっています。たまに家族で車に乗って買い物に行きます。ここで面白いのが立地で、サムズクラブは「歩いてふらっと寄る」場所にないことが多い。車がないと正直きつい場所にあって、その不便さ自体がモデルの一部になっています。来店がイベント化しやすいし、まとめ買いの前提が崩れにくい。都市の中心で日用品を少し買う店ではなく、生活を一段まとめて支える拠点として組まれている感じがします。
このサムズクラブに、ウォルマート中国がどんどん寄っていっているのが、中国ならではのダイナミックさです。ウォルマートは中国で既存のハイパーマーケットを減らしながら、サムズクラブの大型店を増やす方向へ大きく舵を切っている、とする報道が複数出ています。
たとえば英語圏の業界記事では、JD.comとの資本関係を解消した上で、中国ではサムズクラブの拡大に焦点を当てる趣旨が書かれていました。ほかにも中国の業界報道で、ハイパーマーケットの閉鎖を含む構造転換と、サムズクラブ新店の拡大が並列で語られています。
ここで私が現場でいちばん腹落ちしたのは、店舗の増加以上に、クイックコマースの運用が街の中に溶け込んでいる点です。サムズクラブが半径10kmにないエリアであっても、紫のサムズクラブのジャケットを着用した専用ドライバーを深センで見かけることが多いです。初めて見たときは、遠くの店舗からわざわざ走ってきているのだろうと思っていました。
しかし実態は、ダークストアが深センのいたるところに配置され、各エリアの需要を予測したうえで生鮮食品を含む商品を事前にダークストアへ寄せ、そこからクイックコマースで消費者のもとへ届ける仕組みがあるのだと、街の動きから感じるようになりました。
店舗が少なくても、ダークストアの網があれば都市全体に配送体験を広げられる。中国のサムズクラブが単なる大型店拡大に見えないのは、この「店舗とダークストアを同時に増築している」点にあります。
一方で、すべてがクイックコマースに置き換わるわけでもありません。オフラインの店舗に行かないと買えない商品や、店内での発見や試食を含めた体験が強い商品も残しています。つまりサムズクラブは、クイックコマースで日常の利便を取りにいきつつ、オフライン店舗で会員体験と独自性を担保するという使い分けをしているように見えます。
ただし、拡大が速いほど難しくなるのが、会員が求める特別感の維持です。独自性のある商品を求めて会費を払う層に対して、現地化を進めすぎると「ここで買う意味」が薄れる。逆に輸入や独自商品に寄せすぎると、供給が不安定になったり価格が上がったりする。
拡大局面では、この綱渡りが必ず出ます。最近の報道でも、売上規模の拡大と同時に、品質や選品を巡る不満が語られています。2026年は新店の数以上に、この会員心理のバランスをどう保つかが見どころになりそうです。
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