春節が帰省一択ではなくなった中国で若者が選ぶ過ごし方

帰省一択だった春節が、反向過年・旅行・分割滞在へ分岐。年貨、年夜飯、デジタル年俗の変化から、中国若者の意思決定と市場の読み方を解説します。
吉川真人 2026.02.16
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おはようございます。中国深セン在住の吉川です。

春節といえば、実家に帰って親戚回りをして、年貨を抱えて、年夜飯を食べて、春晩を見ながら夜更かしする。長くそういうイメージが強かったと思います。ところが最近の中国では、春節を若者が主導し始めたことで、同じ春節でも中身がかなり違う行事になってきました。帰省は依然として大きな潮流ですが、必ずしも全員が同じ動きをしない。むしろ分岐が増えています。

今年の春節を見ていて強く感じるのは、春節がもはや帰省の一択ではなくなったことです。親を都市側に呼ぶ人もいれば、旅行で団らんを作る人もいる。さらに言えば、春節の前半は海外や別都市、後半は居住地という分割滞在も目立つようになりました。
中国市場を追う側にとって重要なのは、春節が一つの巨大な行事でありながら、中身は複線化し、消費も移動もデジタル行動もバラバラに動き始めている点です。春節を単なる季節イベントではなく、家計、移動、消費、デジタル行動が同時に動く巨大な意思決定の塊として捉え直すのが狙いです。

用語を押さえると理解が速い

本文に出てくる言葉は、中国の前提を知らないと掴みにくいので、最低限だけ整理します。

年貨は、春節前にまとめて買う正月向けの買い出し全般です。食品の詰め合わせや酒・菓子といった定番に加え、親戚回りの手土産も含まれます。家の備蓄であり、体面でもあり、支出が膨らみやすい領域です。

年夜飯は、大晦日の夜に家族で囲む食事です。日本の年越しに近いですが、中国では親族が揃い、円卓で大皿を分け合うこと自体が儀式になりやすい。時間と手間と期待がここに集まります。

非遺は無形文化遺産の略称で、工芸や技法、民俗行事など形のない文化資産を指します。近年は、非遺の意匠や物語性をギフトに取り込む動きが強く、若者の年貨にも入り込んでいます。

年俗は、春節の習慣やしきたり全般です。貼春聯や爆竹だけでなく、オンラインの红包や配信視聴など、デジタル上の行動も含めて語られるようになっています。

従来の春節は家族行事であり移動行事だった

春節の基本構造は、地縁・血縁のネットワークを年に一度、物理的に再接続する装置でした。帰省して祖父母に会い、親戚に挨拶し、子どもにお年玉を配り、家族の近況が共有される。都市に出た若者にとっては、実家へ戻ることそのものが儀式であり、春運が社会インフラとして成立してきた理由でもあります。

私自身、この従来型の春節を強烈に体験したことがあります。2012年に留学していたとき、帰国前の春節を四川の友人のご実家がある楽山で過ごさせてもらいました。世界遺産の大仏で知られる都市です。親戚が集まり、円卓を囲み、年夜飯を食べながらテレビ番組を見て、0時を回った瞬間に外が戦争みたいになりました。

マンションの高めのフロアに向けてロケット花火が何発も飛んできて、窓を開けたら火事になるのではと本気でビビったのを覚えています。あれこそが、私の中にある伝統的な春節の原風景です。家族が集まって、食べて、夜更かしして、新年を爆音で迎える。

消費の面でも、年貨は家の備蓄と体面の両方を担っていました。大人数が集まる前提で、量が多く、誰に出しても恥ずかしくない定番が選ばれ、親戚回りの手土産も含めて出費は膨らむ。ここで見落としがちなのが、働く子どもが親に現金を渡す慣行です。
地域や家庭で濃淡はありますが、都市で稼ぐ側に回った瞬間、春節は親孝行と家計の試算を同時に迫ってきます。実家に帰るほど出費が増え、気疲れも増える。これが近年の変化を理解する入口です。

若者が主導すると春節は軽量化し、選択肢が増える

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続きは、6069文字あります。
  • ニューチャイニーズという生き方
  • 年貨は実用品から感情と文化認同の媒体へ
  • 年夜飯は手作り信仰から時間の買い方へ
  • デジタル年俗が春節の中心に入り込む
  • なぜいま変わるのか。背景は景気だけではない
  • 日本企業にとっての実務的示唆は何か
  • まとめ
  • 筆者プロフィール

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