China Travel 1.0→2.0~外国人旅行と都市型レジャーの進化から見える、中国観光の新しい形
おはようございます。中国深セン在住の吉川です。
今年のGWは家族で深センから海を渡り、対岸の珠海へ小旅行してきました。マカオに隣接する横琴島を通って、中国政府主導で開発された特区を垣間見たり、中山市と深センをつなぐ深中通道の橋手前にある開発区を眺めたりと、走りながら大湾区(グレーターベイエリア)の強大さを肌で感じる旅になりました。
ただ、旅の主役は景色ではありませんでした。生後15ヶ月の娘が走り始めたのですが、父親似なのか足が速く、目を離した瞬間に人混みに消えます。旅の間中スマホを見る余裕はまったくなく、「子どもが生まれてからLINEの返信が遅くなった」という友人たちの気持ちを、珠海の街角でようやく理解することができました。
さて今回は、そんなGWの旅行気分にちなんで、「中国旅行が新しいフェーズに入っている」というテーマでお届けします。
日本人YouTuberが映し出す「中国旅行の変化」
さて、最近、日本人YouTuberが昆明などの地方都市から、中国での現地体験を動画で配信しています。そこに映っているのは、北京や上海の有名観光地を巡るだけの中国旅行ではありません。地元の市場を歩き、ローカルの食文化に触れ、街の便利さを体感しています。視聴者にとって、それは単なる観光情報というより、「今の中国を実際に体験している映像」として映ります。

日本人が全く行かない中国の田舎に行ってきたんだけど衝撃すぎ…【昆明】
youtu.be/2Nsp7KJV9Mw
この変化は、中国の入境旅行が新しい段階に入っていることを示しているように感じます。これまでの外国人向け中国旅行は、どちらかといえば「有名な場所を見に行く」ものでした。しかし今は、「中国で何を体験できるのか」「どんな生活の便利さがあるのか」「どんなサービスや産業に触れられるのか」が重要になりつつあります。
つまり、China Travelは1.0から2.0へ進化しています。1.0が名所観光の時代だとすれば、2.0は体験価値の時代です。
1.0時代の中国旅行は「定番観光」が中心

かつて外国人が中国を訪れる場合、目的地はかなり限られていました。北京で万里の長城や故宮を見て、上海で対岸でギラつく外灘や高層ビル群を眺めたり、少し足を延ばして西安の兵馬俑を見たり、と、「中国らしい名所」を巡る旅行が、長らく入境旅行の中心でした。
もちろん、それ自体に価値がないわけではありません。長城や故宮は中国の歴史と文化を象徴する場所であり、外国人にとっては一度は見てみたい観光資源で、北京に住んでたからこそ心からお勧めできるスポットです。
ただ、旅行者の行動は比較的単純でした。名所を見る、写真を撮る、お土産を買う、ホテルに戻る。観光客数や訪問都市数が重視され、旅行者一人あたりの体験の深さや消費の広がりは限定的だったかもしれません。
この時代の入境旅行は、主に外貨獲得や観光産業の回復という文脈で語られていました。都市側も、旅行会社側も、いかに多くの外国人を呼び込むかが重要でした。しかし、旅行者のニーズが成熟し、中国の都市やサービスも大きく変化したことで、単なる名所巡りだけでは満足されにくくなっています。
2.0時代は「中国でしかできない体験」を買う時代

今起きている変化は、外国人旅行者が中国に対して求めるものが変わってきたということです。彼らはもはや「本物の中国を見たい」だけでは満足していません。もっと具体的に、中国の生活の便利さを体験したい。中国の医療や中医に触れてみたい。中国のテクノロジー企業を見学したい。地方都市の食文化や市場を歩いてみたい。そうした細分化されたニーズが出てきています。
象徴的なのが、中国のホテルで使ったトイレに感動した外国人旅行者の話です。ある外国人は、中国滞在中にホテルで使った自動洗浄機能や夜間ライト付きのトイレを非常に気に入り、帰国後にわざわざ中国から購入しようとしたそうです。運送費は高く、排水管の規格も異なります。それでも「使ってみて初めて分かる快適さ」があり、どうしても欲しいと考えたわけです。こんなエピソードを聞いたらTOTOの中国市場担当は発狂してしまいそうですね。
これは単なる面白エピソードではありません。旅行中の体験が、そのまま購買行動につながっている点が重要です。かつて中国人観光客が日本で温水洗浄便座を買っていた時代がありましたが、今度は外国人が中国の生活サービスや製品に感動し、購入したいと考える時代になっている。これは、中国のサービスや生活インフラそのものが、観光資源になり始めているという証左です。
まさかのまさかで中国の医療ツーリズムは「観光の周辺」から「目的」になりつつある

China Travel 2.0を語る上で、医療ツーリズムの成長も見逃せません。中国を訪れる外国人の中には、観光だけではなく、医療や健康関連のサービスを目的にする人も増えています。
私が参考にした記事では、ある入境医療旅行の事業者がTikTokアカウントを開設したところ、わずか2か月で2万人のフォロワーを獲得した事例が紹介されています。また、上海の公立病院では、昨年7万人以上の外国人を受け入れたともされています。これは、中国の医療サービスが一部の外国人にとって、十分に魅力ある選択肢になっていることを示しています。TOTOに続いて、日本で医療ツーリズムのインバウンド客に期待する医療機関のマーケティング責任者は号泣してしまうストーリーです。
特に中医は、中国ならではの体験として外国人にとって分かりやすいコンテンツです。西洋医学とは異なる身体観、診療方法、漢方や鍼灸などの体験は、観光と組み合わせやすい高付加価値サービスになります。さらに、中国の医療は「効率が高く、価格も比較的抑えられている」と感じる外国人もいるようです。実際に中国で診療を受けた外国人がSNSで発信すれば、それがまた新たな集客につながります。私にはにわかに信じられない話ですが、もしかしたら中国の医療に対する偏見が拭いきれずにアンラーニングするべきタイミングが来ているのかもしれません。
これまで医療は観光の外側にあるものと考えられがちでした。しかし2.0時代の入境旅行では、医療、健康、ウェルネスは観光と結びつき始めています。これは旅行会社だけでなく、病院、決済会社、通訳、送迎、宿泊施設まで巻き込む大きなサービス産業になり得ます。