人類のハーフマラソンの記録を破ったHonor製ロボットが50分26秒で表彰台を独占。スマホメーカーが塗り替えた「ヒューマノイドの世界記録」
昨日は炎天下の中、野球の公式戦に参加してきました。6時半にチームで集合するところ、6時27分に目を覚ましたので冷や汗をかきました。深センから中山市のパンダ球場まで自分で車を運転していったので、チームのバスより先に到着するという逆転現象が起きたのはよかったのですが、肝心の試合は負けました。今年はまだ一勝もできておらず、苦しい戦いが続いております。
そんな私が炎天下でバットを振っていた同じ日、北京では「人間より速く走るロボット」が誕生していました。
2026年4月19日、北京・亦庄で開催された「2026北京亦庄人形ロボット半程マラソン」。Honor(栄耀)製ヒューマノイドロボット「閃電(フラッシュ)」が21.0975kmを净タイム50分26秒で走り切り、人類の半マラソン世界記録(56分42秒)を大幅に上回りました。私が中山市で1試合も勝てずに悔しがっている間に、北京では別次元の話が動いていたわけです。
ただ、今日この記事でお伝えしたいのは「記録が出た」という事実だけではありません。「誰が」「どのように」記録を出し、「それが何を意味するか」──そこに、中国ヒューマノイドロボット産業の現在地が凝縮されています。
大谷翔平が飛距離ランキング1・2・3位を総なめしたみたいな日

MLBオープン戦で大谷翔平が飛距離ランキングの上位3位を独占したとしたら、どう感じるでしょう。驚くというより、「他の選手たちのプライドが心配だ」という気持ちになりませんか。
今回のロボットマラソンで、まさにそれが起きました。
優勝(净タイム50分26秒)・準優勝(同50分56秒)・3位(同53分01秒)──表彰台を独占したのは、いずれもHonorの「閃電」。しかも上位3チームはすべて自律ナビゲーションモード、つまり人間が遠隔操作するのではなく、機械が自分でコースを判断しながら完走した記録です。

競合他社からすれば、これは単なる「負け」ではありません。昨年の優勝タイムを大幅に更新しながら表彰台を総なめにされるという、どこから見ても返す言葉のない完敗です。業界内では今、「あの結果をどう説明するか」という会話が続いているといいます。
注目すべきは、Honorがロボット分野に本格参入したのはわずか1年前という事実です。2025年3月のMWCで初めてロボット戦略を公式発表し、同年5月には自社開発アルゴリズムを搭載したロボットが4m/秒の走行速度で業界記録を更新。そして2026年4月には人類の半マラソン世界記録を塗り替えた。参入から1年、そのスピードは通常の製造業の論理では測れません。
「閃電」が速い理由─液冷システムと200人規模のチームが生んだもの

「50分で走れるロボットをどうやって作るか」という問いに対して、Honorの答えはシンプルです。熱管理と電力の問題を徹底的に潰したようです。
長距離走でヒューマノイドロボットが直面する最大の壁は、モーターの発熱と電池切れです。人間のマラソン選手が汗をかくように、ロボットも動き続けると熱を持ちます。ただ人間と違うのは、熱がそのまま機械の寿命と性能に直結するという点です。

「閃電」のスペックを見ると、身高169cm・有効脚長0.95m・自社開発の高トルクモーターに加え、1分あたり4リットル以上の熱交換が可能な液体冷却ポンプと400Wh/kgという高エネルギー密度バッテリーを内蔵しています。要するに、走り続けながら自分で冷却できる設計です。担当エンジニアによれば、ハーフを完走した後もモーターは常温を維持していたといいます。
感知系のアーキテクチャは、自動車の自動運転に近い構成です。上下2基のLiDARと機体上部の衛星測位アンテナ(GNSS)を組み合わせ、21km・22か所のカーブ・複数の90度急転換を含む複雑なコースを高精度で自律判断しました。
このロボットの開発チームは北京・上海・深センの3拠点に分散した200人超規模で、整機設計・ハードウェア・モーションコントロール・センシング・エンボディドAI・テストまでを一気通貫で担っています。1年でこの規模の体制を構築したことも、中国テック企業特有の動き方を象徴しています。
ひとつ付け加えておくと、今回の大会では「遠隔操作組の閃電」も最初にゴールラインを切っています。タイム48分19秒で先頭でゴールしたのですが、遠隔操作組には成績係数1.2倍のペナルティが課されるルール設計のため、換算後タイムは約57分となり自律組に及びませんでした。つまりHonorのロボットは遠隔操作でも自律走行でも他社を上回っていたわけで、この事実はもう少し注目されてよいと思います。
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- 去年と何が違うのか─「完走できるか」から「何分で走るか」へ
- Honorはなぜロボットに本気になったのか─IPOと「第二の柱」の論理
- このニュースが日本企業に突きつけること
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