「メイドインジャパン」は、もう国籍ではなく設計思想。大阪万博EVバス騒動から考える、日本製信仰の終わり
おはようございます。中国深セン在住の吉川です。
最近、日本から深センに来られる方々をご案内する機会が増えています。ロボット企業の訪問、テック企業の視察、現地のスタートアップとの意見交換、異業種の方々との会食など、私自身も日々かなり多くの学びを得ています。
深センにいると、製造業やテクノロジーの変化が「ニュース」ではなく、「目の前の現実」として飛び込んできます。
先日もドローン関連の展示会に参加し、ドローン業界の関係者の方々と交流する機会がありました。そこで改めて感じたのは、中国のドローン産業の進化の速さです。機体の性能、部品供給、ソフトウェア、実証実験、商用化までのスピードが非常に速いですね。

明日は日本のドローン業界の方々とお会いするのでたくさん学ばせてもらいます🚁
あ、会場は革靴は非推奨
もちろん案件や会社によりますが、日本なら一四半期かけて検討するような話が、中国では3日で方向性まで決まり、そのまま試作や実証に動き出すことがあります。
このスピード感の違いは、資料を読んで理解するものではありません。現場で企業の人たちと話し、展示会で新製品を見て、翌週には別の会社が似たような改良版を出してくるのを目にすると、体で理解するものです。
誤解してほしくないのは、これは中国製を無条件に礼賛する話ではないということです。深センにいても、品質の低い工場もありますし、対応の粗い会社も普通にあります。こちらが見極めを間違えると、日本企業は簡単に痛い目を見ます。
ただ、それ以上に強く感じるのは、「中国製だから悪い」「日本企業だから安心」という単純な見方では、もう現実を説明できないということです。
むしろ今は、中国側のクオリティが急速に上がっている一方で、日本側の意思決定や業界全体のスピード感が追いついていない場面も増えています。
このギャップを日々肌で感じている中で、改めて考えさせられたのが、大阪・関西万博のEVバス騒動です。
「国産EVバス」「日本企業製」と見なされていた車両の実際の製造は、中国メーカーに委託されていました。そして、その車両で不具合が相次ぎ、最終的には大規模な点検、使用停止、メーカーの民事再生へとつながっていきました。
この問題は、単なる一社の品質問題ではありません。
日本人がまだどこかで持ち続けている「日本製なら安心」「中国製は不安」という古い感覚が、現代の製造業の実態と噛み合わなくなっていることを示す象徴的な出来事だと思います。
今日はこの騒動を入口に、「メイドインジャパンとは一体何なのか」を、深センで中国製造業を見てきた私なりに整理してみます。
大阪万博EVバス騒動は、なぜ象徴的だったのか
2025年の大阪・関西万博では、会場輸送用のEVバスをめぐって大きな問題が起きました。
中心にいたのは、福岡県北九州市のEVモーターズ・ジャパン、通称EVMJです。同社は大阪・関西万博向けにEVバスを多数納入していましたが、2026年4月14日、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。報道によると、負債総額は約57億円です。
問題は、単に一社の経営が行き詰まったという話ではありません。
EVMJのEVバスについては、万博輸送で走行中の停止やドアの開閉不良など複数の不具合が確認されました。これを受けて国土交通省は2025年9月3日、万博輸送用だけでなく同社車両全般について、総点検を至急実施するよう指示しました。
さらに国交省の会見では、委託製造先の中国メーカーを含めた品質管理体制の見直しが必要だと説明されています。
その後、国内45企業・団体に納入された計317台を総点検した結果、113台で不具合が確認されたとされています。単純計算で約35.6%です。これは公共交通に関わる車両としては、かなり重い数字です。
さらに国交省には、WISDOM製「F8 series4-Mini Bus(6.99m)」85台についてリコールの届出も出ています。不具合内容は、前輪ブレーキホースの取り回し設計が不十分で、ハンドルを切った際に車体などへ接触し、使用を続けるとブレーキホースが損傷し、最悪の場合は制動力が低下するおそれがあるというものです。
大阪メトロも2026年3月31日、保有するEVMJ製EVバス全てについて今後使用しないと発表しました。対象は大型バス115台、小型バス35台、超小型バス40台の計190台です。
ここまでなら、「新興EVバスメーカーの品質問題」として処理できるかもしれません。
しかし、この問題がより象徴的だったのは、「国産EVバス」「日本企業製」というイメージの裏側に、中国メーカーによる製造委託という構造があったことです。

EVMJは日本企業です。販売主体も日本企業です。したがって、これを単純に「中国製だった」とだけ言い切るのは正確ではありません。
ただし、少なくとも実際の製造には中国メーカーが関わっていました。国交省のリコール資料でも、対象車両の製作者名として中国のWISDOMが明記されています。
つまり、ここで問題にすべきなのは、「日本企業か中国企業か」という表面的な分類ではありません。
日本企業が販売している。だが、実際の製造は中国メーカーに委託している。では、品質責任はどこにあるのか。製造元の実力は誰が検証したのか。発注側はどこまでサプライチェーンを理解していたのか。保守体制は十分だったのか。
この問いこそが重要です。

こういうのがチリツモで世論操作することになるんじゃないのでしょうか。
一方で、当初から日本市場でEVバスの導入実績を積み重ねていたBYDは、2015年に日本市場へEVバスを導入し、2025年時点で累計350台を全国に納入、日本国内EVバス市場で7割強のシェアを占めると発表しています。
BYDにも課題がないわけではありません。中国企業である以上、政治的な見方や調達上の懸念も出てきます。しかし、市場実績という面では、EVMJより明確な蓄積がありました。
ここで皮肉なのは、「中国製ではなく、日本企業製を選ぶ」という方向性が語られた結果、実際には中国メーカーが製造に関与した別のバスを選び、その品質問題が大きく表面化したことです。
繰り返しますが、これは「中国製が良い」「日本製が悪い」という話ではありません。
むしろ逆です。
今の製造業では、国籍ラベルだけで品質を判断すること自体が、かなり危うくなっているのです。
「日本製なら安心」という感覚は、どこまで現実なのでしょうか

日本国内には、メイドインジャパンに対する強い信頼があります。
特に、パナソニックを今も「ナショナル」と呼ぶ世代にとって、日本製品は品質の象徴です。その感覚は、歴史的には正しかったと思います。高度経済成長期から1980年代、1990年代にかけて、日本の家電、自動車、精密機器は世界市場で非常に高い評価を受けてきました。
ただし、その成功体験があまりに強かったために、今でも「日本企業が売っている」「日本語のパッケージである」「日本の展示会や公共案件で採用された」というだけで、なんとなく安心してしまう空気があります。
深センにいると、その感覚がいかに現代の製造業とズレているかを毎日のように感じます。
たとえば、DJIのドローンやカメラ周辺機器は、世界中の映像制作者、測量会社、農業現場、防災現場で使われています。Ankerの充電器やモバイルバッテリーも、日本の家庭やオフィスに当たり前のように入り込んでいます。
スマートフォン、イヤホン、ロボット掃除機、ウェアラブル機器、モニター、配信機材、LEDディスプレイ。日本人が意識せずに使っている中国発・中国製造の製品は、すでに生活の奥深くまで入り込んでいます。
にもかかわらず、SNSでは今でも「中国製は危ない」「日本製なら安心」という短絡的な議論を見かけます。
もちろん、中国製品にも品質のばらつきはあります。深センで仕事をしていると、素晴らしい工場もあれば、絶対にお客様に紹介できない工場もあります。ここはきれいごとではありません。
しかし、それは日本でも同じです。
大切なのは国籍ではなく、誰が設計し、誰が品質管理し、誰が責任を持ち、どの市場で実績を積んできたかです。
今回の万博EVバス騒動は、「日本企業製」というラベルだけでは品質を保証できないことを、かなりわかりやすい形で示してしまいました。
日本企業が関わる製品の4つのパターン
ここで一度、現代の「日本企業が関わる製品」を4つのパターンに分けて整理してみます。かつては「日本製」か「外国製」かで議論できたかもしれません。しかし、今の製造業はそこまで単純ではありません。
大きく分けると、次の4つがあります。
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- パターン1:ほぼ完成品を輸入して「日本企業製」として売るケース
- パターン2:中国の部品や半完成品を日本で組み立てるケース
- パターン3:中国で7割作り、日本の職人が仕上げるケース
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