深セン龍崗区「ロボット大道」全解説─法律AIから介護ロボットまで、日本のヒントが詰まった1本の通り
おはようございます。中国深セン在住の吉川です。
先日、日本の大手企業の新規事業の方々をお連れして深センテクノロジー体験企画を行いました。いくつかの訪問先をまわるなかで、「せっかくなので」と立ち寄ったのが龍崗区(ロンガン区)の坂田エリアにある「机器人大道(ロボット大道)」。実はその翌日、2026年5月30日が正式オープンだったのですが、一日早く足を運んだおかげで、まだ工事の余韻が漂う、生々しい生まれたての街の空気を味わうことができました。
「これは間違いなく化ける場所だ」—その確信を、今日はみなさんにお伝えしたいと思います。
「一日早く来てよかった」——深センの変化は予告なく訪れる

深センに長く住んでいると、こういうことが頻繁に起きます。「来月オープン」と聞いていた施設が気づけば今週開業していたり、「まだ準備中」だと思っていた場所が翌朝には完成していたりします。この街の変化のスピードは、東京の感覚では測れません。
今回のフィールドワークもまさにそのパターンでした。5月29日の段階では、ロボット大道の一部施設はまだ最終調整中で、人影もまばら。おかげでじっくりと、他の来場者に気を使うことなく各施設を見て回ることができました。
翌30日の正式オープンでは、第2回龍崗区人工知能・ロボット発展大会が盛大に開催され、龍崗区副区長をはじめとする行政関係者、国内外のメディア、投資家が集まり、一気に注目度が上がったと聞いています。「有名になってから行こう」では人だらけで肝心な情報が取れません。一歩先に足を運ぶことが、深センでは最大の競争優位になる—これは深セン生活7年超で学んだ、私の鉄則のひとつです。デスクリサーチする暇があれば現場に行き現物を見て現実を知る三現主義者です。
そもそも「龍崗区」とは——深センのもうひとつの顔

深センと聞けば、多くの方は南山区のテンセント本社や、福田区のCBDを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし近年、もうひとつの顔として急速に存在感を増しているのが龍崗区です。
深センの東側に位置する龍崗区は、面積だけで言えば深セン最大の行政区です。かつては製造業の下請け工場が集積する「工業地帯」のイメージが強かったのですが、ここ数年で様変わりしてきました。龍崗区は「鴻蒙之区(ホンメン・ゾーン)」というキャッチフレーズを掲げ、HUAWEIのHarmonyOSエコシステムとの連携を軸に、AI・ロボティクス産業の集積地として生まれ変わろうとしています。
その核心にあるのが「All in AI」戦略です。区全体でAI産業を全面的に誘致・育成し、単なるものづくりの街から「AIが街に実装された未来都市」へと転換しようという、かなり野心的なビジョンです。ロボット大道はその象徴プロジェクトとして位置づけられています。
「ロボット大道」とは何か——街ごとAIショールーム

ロボット大道が開設されたのは、坂田星河WORLDパーク内です。坂田エリアはHUAWEIの研究開発拠点が集積することでも知られており、テック系企業や人材が多く集まるエリアです。
このロボット大道、一言で言えば「ロボットとAIを街の中で実際に使いながら見せる、屋外型の産業ショールーム」です。中国初の「エンボディドAIロボット示範街区」として公式に認定されており、単一の建物や展示会場ではなく、通りに沿って複数の施設が連なる「街区型」の構成になっているのが最大の特徴です。
展示会に行けばロボットは見られます。でも、展示会のロボットはステージの上で踊っているだけで、「実際にどう使われるのか」がなかなか見えない。ロボット大道が目指しているのは、それとは異なる体験です。通りを歩けばロボットが実際に清掃をしていて、店に入ればロボットがコーヒーを出してくれて、法律相談窓口にはAIアバターの弁護士がいる——そういう「生活の中にAIが溶け込んだ状態」を、街のスケールで見せようとしています。
政府が旗を振り、企業が主役となって場を作り、そこで実際のサービス提供を通じてデータを蓄積し、技術を磨いていく。「政府引導、企業主導、場景駆動(政府が方向を示し、企業が動き、シナリオが技術を育てる)」という考え方は、深センが以前から得意としてきたやり方ですが、それをロボット産業でも本格的に実践し始めた、というのが今回の開業の意味だと私は捉えています。
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