日本抹茶不足で中国抹茶が躍進、貴州省銅仁市が「第二の宇治」を目指す
おはようございます。中国深セン在住の吉川です。
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さて、中国の茶業界には今、大きな変革の波が押し寄せています。特に日本の抹茶が深刻な供給不足に陥る中、中国の抹茶産業が急速に台頭し、世界最大の抹茶生産・消費国として注目を集めているのです。中でも貴州省銅仁市は「中国抹茶之都(中国抹茶の都)」として、中国全体の抹茶生産量の4分の1を担う一大産地へと成長しました。
日本抹茶の供給危機が中国に追い風をもたらす背景
抹茶の原料である碾茶(てんちゃ)の生産は、気候変動の影響を大きく受けています。特に2023年には、日本の一部地域で異常気象による茶葉の品質低下や収穫量への影響が報じられました。抹茶の「聖地」として知られる京都府宇治市では、例年2トンを収穫できていた茶農家が、2023年は収穫量が1.5トンに減少したとの報告もあります。
この生産量の減少と世界的な需要の拡大が重なり、碾茶の価格は高騰しています。2024年5月時点で、碾茶の価格は1キログラムあたり8,235円(約408元)に達し、前年同期比で大幅に上昇したと見られています。宇治の有名抹茶店「中村藤吉本店」では、開店後わずか5分で抹茶粉が売り切れるといった事態が発生し、一部の抹茶ブランドでは観光客への販売制限を始める動きも見られました。
一方で、世界的な抹茶の需要は急激に拡大しています。訪日外国人観光客数は急速に回復しており、2024年には年間で過去最高を記録する勢いです。また、Google Trendsでの「抹茶」検索数も2019年のピーク時と比較して33.3%増加し、その注目度は史上最高レベルにあります。
抹茶の生産には最低でも5年の栽培期間が必要なため、需要の急増に対して短期間で供給量を増やすことは困難です。この需給ギャップが、中国の抹茶産業にとって大きなビジネスチャンスとなっています。
貴州省が中国抹茶産業の中心地となった理由
中国における抹茶生産の歴史は意外にも古く、実は抹茶の起源は中国にあります。魏晋時代に「末茶」として始まり、唐時代に興隆し、宋時代に全盛期を迎えました。その後、遣唐使や禅師を通じて日本に伝わり、現在の「抹茶」として発展したのです。
貴州省が抹茶産業の拠点として選ばれた理由は、その優れた自然条件にあります。雲貴高原に位置する貴州省は、高海抜・低緯度という茶葉栽培に最適な環境を持ち、茶葉の栄養成分の蓄積に適しています。特に銅仁市江口県は、世界自然遺産である梵浄山の麓に位置し、抹茶生産に理想的な立地条件を備えていまき
2017年に貴茶集団が江口県に進出し、世界最大規模の抹茶単体精製工場を建設しました。貴茶集団の副総経理である蘭方強氏によると、2023年の同社抹茶生産販売量は1,000トンを超え、そのうち400トン以上が海外に輸出されました。この1,000トンという数字は、2023年の日本全国抹茶生産量の4分の1に相当する規模です。

さらに注目すべきは、2025年上半期に銅仁市が初めて日本向けに4トンの抹茶を輸出し、今後さらに6トンの対日輸出を予定していることです。現在、銅仁抹茶は米国スターバックス、日本のゼンショーホールディングス、海底捞火鍋などの大手飲食企業の重要な供給源となっています。
中国抹茶産業の急成長を支える新茶飲市場
中国の抹茶産業が目覚ましい成長を遂げている背景には、国内で爆発的に拡大している「新茶飲(ニューティードリンク)」市場の存在があります。この新茶飲市場からの旺盛な需要が、中国国内での抹茶生産量を大幅に押し上げており、2025年には中国の抹茶生産量が5,000トンを超えると予測されています。これは、世界的な抹茶需要の高まりと、国内消費の急速な拡大が強く結びついていることを示しています。
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- 新小売業態との革新的な協力モデル
- 京都宇治に学ぶ文化的価値創造の課題
- 銅仁抹茶産業が目指すべき文化的発展の方向性
- 日本企業が注目すべき中国抹茶産業の発展可能性
- 世界抹茶市場の構造変化と今後の展望
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