胖东来式経営:社員と顧客を幸せにする秘密
新年明けましておめでとうございます。深セン在住の吉川です。いつもニュースレターをご覧いただき、ありがとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
本日は少し私的な話題から始めさせていただきますが、伏せておりましたが実は昨年後半に、私自身も結婚いたしました!お相手は深センで知り合った中国の素敵な女性です。人生の新たな章を開きましたが、これからも引き続き皆様とのつながりを大切にしていきたいと考えております。
さて、個人的な報告から話題が少しずれてしまいますが、
最近、私たちが住んでいる中国で注目を浴びている企業があります。それが、河南省を拠点に急成長を遂げたスーパーマーケットチェーン「胖东来(パン・ドンライ)」です。特に年始早々にこの企業が発表した「社員結婚規定」が話題となり、中国で再び注目を集めています。
この規定は、結婚に関する経済的負担を軽減し、社員の幸福を追求することを目的にしたもので、社会的な議論を巻き起こしています。結婚をテーマにした企業の方針がなぜこれほど注目されるのか。そして、この胖东来という企業がなぜこんなにも急成長を遂げているのか。その成功の要因を探りながら、日本企業にも学べることは多いと感じています。本日は、その点について詳しく掘り下げていきたいと思います。
結婚規定を巡る話題
2025年1月3日、胖东来は、社員向けに新たな「結婚執行標準」規定を発表しました。
この規定が大きな注目を集めた背景には、以下の内容が含まれています。
1. 彩礼(中国における結納金)の授受を禁止
中国では伝統的に結婚時に「彩礼」と呼ばれる結納金が重要な役割を果たしています。
これは、男性側が女性側に対して結婚の証として金銭や物品を贈る習慣であり、経済的な意味合いを持つとともに、結婚の一大イベントとされています。
しかし、胖东来はこの習慣に反対し、社内規定として社員間での結納金の授受を一切禁止しています。
この規定は、結婚に関わる経済的な負担を軽減し、社員が物質的な圧力から解放されることを目的としており、結婚が純粋に感情的な意味でのつながりに焦点を当てられるようにするためのものです。
結納金の授受が習慣化している中国の文化において、このような決定は革新的であり、同時に社会的な議論を呼び起こしましたが、社員の精神的な健康や経済的な安心を重視する姿勢が注目されています。
2. 親からの資金援助の制限
また、胖东来は結婚後の住宅や車の購入に関して、親からの資金援助を制限するという独自の規定を設けています。中国では、特に若い世代にとって、結婚後の住宅購入や車の取得は多くの場合、親の支援が重要な役割を果たします。
しかし、胖东来はこの伝統的な慣習に疑問を呈し、社員が親からの援助に過度に依存しないように、独立した経済基盤を築くことを推奨しています。
この規定が発表された際、一部の社員は驚きと共に受け入れたものの、若者の自立を促進する目的として肯定的に捉える声も少なくありません。
親からの支援を制限することにより、社員が自分たちの力で生活基盤を築き、経済的に自立することを期待しています。
3. 借金返済に関する規定
さらに、胖东来は社員が親から借金をする場合、その返済計画をしっかりと立てることを求める規定も設けています。
中国では、結婚や家族の支援を受ける際に親からの借金をすることが一般的ですが、返済の計画をしっかりと立てることで、社員が不安定な経済状況に陥らないように配慮しています。
この規定は、社員が借金を背負った状態で無理な生活を送ることなく、経済的な負担を適切に管理するための支援策です。
特に、結婚後の生活設計や家計管理が重要なタイミングで、借金の返済計画を明確にすることは、社員の心理的安定を促進し、家庭生活におけるストレスを軽減する役割を果たします。
借金返済に関するルールの導入は、社員に対して責任感を持たせ、経済的な不安を解消するための有効な手段とされています。
この規定は、結婚という人生の重要なイベントにおける経済的負担を軽減し、社員の心理的な安定を図る狙いがあります。しかし、中国社会では結納金や親からの支援が根強く存在するため、規定に賛否が分かれ、社会的な注目を集めています。この企業のユニークな結婚規定がどのようにして生まれ、どのような影響を与えるのかを探ることが、今後の企業経営にも大いに参考になるでしょう。
胖东来とは?
胖东来(パン・ドンライ)は、1995年に中国・河南省許昌市で創業された地域密着型のスーパーマーケットチェーンです。創業当初は小さな酒屋としてスタートしましたが、急成長を遂げ、現在ではスーパーマーケット、百貨店、家電、食品、ファッションなどを取り扱う総合的な小売業者に成長しました。まるでイオンモールのようですね。2024年には売上高169.64億元(約3,400億円)を記録し、従業員数は1万人を超え、急速に規模を拡大しています。
その成功の秘密は、単なる規模の拡大や利益追求にとどまらず、顧客と社員を最優先に考えた経営哲学にあります。特に「人中心の経営」に基づく事業運営が、胖东来の大きな特徴となっています。