米中貿易戦争「ロボット編」が始まった─中国ロボットを追いかける日本人として、正直に思うこと

米国がロボットを新たな規制対象に加え、米中テック競争は「ロボット編」へ突入しました。中国ロボット企業と向き合い、日本市場への展開を支援する立場から見ると、これは単なる規制の話ではありません。競争環境、研究開発、そして日本企業が取るべき戦略が大きく変わる転換点です。
吉川真人 2026.08.03
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おはようございます。中国深セン在住の吉川です。

先日、深センのあるメーカーの担当者と話していたとき、「うちの製品は最初から米国市場向けに設計している」と言われました。中国では以前より自動草刈りロボットやプール清掃ロボットが「輸出の稼ぎ頭」として盛り上がっています。米国は住宅も庭も広く、公園や学校の芝生管理も必要で、しかも人件費が高い。日本よりも自動化ニーズが大きい、という説明でした。その米国市場の入口が、先週、突然狭くなりました。

【3行でわかる今回の話】
・米FCCが7月28日、外国生産の「先進ロボット機器」と「ネット接続型電力インバーター」を規制対象リストに追加
・関税ではなく「認証を出さない」=市場への入口そのものを閉じる規制
・対象は人型ロボットに限らず、ロボット掃除機や草刈りロボットまで含む。しかも中国製品だけの話ではありません

正直に書くと、このニュースを見たとき、私は少し複雑な気持ちになりました。

関税ではなく、「入口を閉じる」規制

2026年7月28日、米FCC(連邦通信委員会)が、外国で生産された「先進ロボット機器」と「ネット接続型電力インバーター」の2カテゴリーを、Covered List(規制対象リスト)に追加しました。

FCCは米国内の通信・電波を監督する機関です。インターネットにつながる電子製品は、米国で輸入・販売する前にFCCの機器認証が必要になります。リストに載った機器はこの認証を新規に取得できなくなり、事実上、輸入・マーケティング・販売ができなくなります。

関税を上げるのではなく、市場への扉に鍵をかけるタイプの規制です。ここは誤解が広がりやすい部分なので、正確に整理します。

すぐに使用禁止になるわけではありません。
対象は「これから認証を申請する新型モデル」だけで、すでに消費者が所有している機器や、承認済み製品の販売には影響しません。また、連邦政府・政府機関向けの輸入・販売は完全に対象外です。 Nextgov.com

完全な締め出しでもありません。
米国防当局(Department of War)が「この機器は脅威ではない」と個別に判定すれば、外国製ロボットでも条件付き承認(Conditional Approval)が得られます。インバーターの場合は国防当局または国土安全保障省(DHS)が担当。抜け道というより、審査つきの通用口が用意された形です。

ソフト更新には期限つきの猶予があります。
リスト掲載機器は本来、ソフトウェア更新すら新たな認証が必要になりますが、FCCは既承認機器のファームウェア・ソフト更新について一括免除を出しました。ただしこの免除は「少なくとも2029年1月1日まで」とされています。期限つきである点は、後で効いてきます。 これは「中国製品の規制」ではありません。FCCは今回の措置を「国籍中立」と明言しており、製造企業がどこの国の会社かは関係なく、「どこで生産されたか」だけが判断基準です。「外国生産」の定義には、Buy American Act(バイ・アメリカン法)の国産品基準を満たさないもの、という規定が流用されています。

つまり、中国やベトナムで生産していれば、米国ブランドでも日本ブランドでも同じように引っかかります。実際、iRobot、SharkNinja、Dyson、Samsung、LGといった各社のロボット掃除機も対象になり得ると報じられています。これらの多くは中国で生産され、一部はベトナム・マレーシア・インドネシアで製造されています。

通商政策の道具だったバイ・アメリカン基準が、安全保障規制の定義に持ち込まれた。この転用は、今後ほかの分野へ横展開される可能性があります。

対象は人型ロボットだけではない

「先進ロボット機器」という言葉から人型ロボットを想像しがちですが、定義はかなり広く取られています。対象は、地上を移動し、次の3つをすべて備えた機器です。

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