北京WRC2026最前線―ロボット産業の評価軸が「踊る」から「働く」へ

8月19〜23日、北京・亦庄で開かれた世界ロボット大会を複数日にわたって歩き、現場を確認してきました。人型ロボットが踊る一方、会場で目立っていたのは、工場での精度、長時間稼働、センサー、データ収集、量産をめぐる仕様の看板。親子連れで賑わう「夢の国」の熱気と、産業化へ進む中国ロボット業界の現在地を、現場からお伝えします。
吉川真人 2026.08.24
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おはようございます。中国深セン在住の吉川です。

前回(8月17日号)の最後に、「来週号のネタはWRCでほぼ確定です」と書きました。宣言どおり先週は北京にいて、今もまだ北京におります。8月19日から23日までの5日間、亦庄の北人亦創国際会展中心で開かれた世界ロボット大会(WRC 2026)に、複数日にわたって足を運びました。

正直に書くと、会場での最初の感想は、技術の話ではなく「歩けない」でした。C館の通路に入ろうとすると人の流れが止まっていて、前の人の背中しか見えません。目当てのブースに近づくのに数分かかり、たどり着いても担当者は来場者に囲まれていて、なかなか話しかけられない。ディズニーランドの人気アトラクション前と同じ密度だと思ってください。ワクワクはするのですが、インプット効率という点では、あまりよくありませんでした。

それでも、会期の最後まで現場を見ておきたかったので、最終日の8月23日は朝8時すぎに会場へ向かい、正午ごろまで歩いてきました。まだブースの準備中という場所も多くありましたが、その分、通路は比較的空いていて、普段なら人に遮られて見えない展示まで確認できました。会期中に何度も人の波に押されたあとだったからこそ、最後は時間帯を変えることで、同じ会場を落ち着いて見直すことができたのです。

この日はXのライブ配信も行いました。画質はあまりよくありませんが、朝の会場の雰囲気は伝わると思います。興味のある方は、私のXアカウントから過去のライブ配信をご覧ください。

今回は、最終日の朝に見た内容だけを書くわけではありません。平日のC館がなぜ人の海になっていたのか、一般公開日にどんな来場者が集まっていたのか、そして複数日にわたって会場を歩くなかで、どんな展示や仕様に足を止めたのか。さらに、会場の外で訪問した企業から何を聞いたのかも含めて、今回の北京行きを振り返ります。

写真フォルダを見返すと、踊るロボットの動画よりも、工場で何時間働けるのか、何ミリずれずに作業できるのか、何を感じ取れるのかといった、仕様の看板や製品資料の写真ばかりが残っていました。

以下を、先ほどの冒頭の直後に続けてください。

WRCは成功した。ただし、誰にとっての成功なのか

まず、今回のWRCは成功だったと思います。

ただし、その成功を商談件数だけで測ると、少し見誤ります。今回のWRCは、ロボット産業の展示会であると同時に、中国の科学技術と国の勢いを幅広い世代に見せるための舞台にもなっていました。

今年は8月22日と23日が一般公開日でした。会場には子ども連れの親子だけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんの姿も非常に多くありました。18歳未満と60歳以上は無料で申し込める仕組みもあり、一般の人がロボットに触れやすい展示会として設計されていたことが分かります。

ロボットの細かな性能を比較するために来ている人もいたでしょう。一方で、単純に「無料でディズニーランドに来ました」というような雰囲気の人も少なくありませんでした。歩いている途中で急に立ち止まる。突然、進行方向を変える。ロボットの前で人が固まり、後ろの人が通れなくなる。現地取材する側からすると、正直かなり歩きにくい会場でした。

ロボットメーカーや部品メーカーからすれば、目の前にいる人の多くは、すぐに製品を買うお客さんではありません。短期的な商談という意味では、ノイズになってしまう場面もあったと思います。

ただ、私はそれを単純に悪いことだとは思いませんでした。私には、WRCが中国の科学技術の発展と国の勢いを、幅広い世代に見せる舞台になっているように見えたからです。

高齢の方には、「中国はここまで進んでいる」という実感を持ってもらう。子どもには、「将来、自分もロボットを作りたい」「エンジニアになりたい」という夢を持ってもらう。

そういう役割を、今年のWRCは担っていました。

日本のNSK、日本精工のブースでも、子どもたちがベアリングの展示を興味深そうに見ていました。NSKの社員の方は、子どもたちに笑顔で接していました。

その光景を見ていると、そこも一種のディズニーランドです。目の前の来場者が今日の顧客でなくても、未来のエンジニアや、ロボット産業を支える社会の一員になるかもしれない。

展示会でありながら、科学館であり、夢の国でもある。今回のWRCの成功は、そこにあるのだと思います。

北京は顔ぶれ、深センは密度

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