中国フィジカルAIは「データ採取元年」に入った─静岡で話してきたこと
おはようございます。中国深セン在住の吉川です。
実は今、日本に一時帰国しています。せっかくなら日本でしかできないことをしようと思い、バイクで京都から静岡市まで往復してきました。
行きの三重県亀山市で、なぜかGoogleマップが国道を選ばず、街灯が一切ない真っ暗な山道を案内してきました。熊が出てもおかしくない道で見事に2回スリップし、危うく死にかけました。生きることに感謝です。そして、下道へのロマンを捨てて高速道路という現代のチートを使うことの重要性を学びました。
そんな命のありがたみを感じながら向かった先が、StartCamp 2026 in Shizuokaです。私の役目は、フィジカルAIのトークセッションにパネリストとして登壇し、中国のフィジカルAIが今どこまで進んでいるのか、現場では実際に何が起きているのかを共有することでした。
今回は、その場で話した内容を中心に、イベント全体で何が起きていたのかも含めて書いていきます。
静岡で3日間かけて作られていた「希望産業」
まず、どんなイベントだったのかを共有させてください。
StartCamp 2026 in Shizuokaは、静岡市で開催されたTECH BEAT Shizuoka連携のイベントです。3日間の構成で、初日が関係形成とコンセプト共有、2日目がテーマセッションとチーム形成、3日目がピッチと表彰でした。

ウォーリーをさがせ的な
参加者の顔ぶれが、いわゆるスタートアップイベントとはかなり違いました。地域金融、行政、大企業、スタートアップ、学生、クリエイター、一次産業、福祉、物流、AI、ロボット。並べると散らばって見えますが、これが一つの言葉でつながっていました。
希望産業です。
希望産業とは、社会課題を深刻な問題としてそのまま抱え込むのではなく、視点を変え、技術・地域資源・成長市場と接続することで、課題解決と事業性を両立させる産業のことです。構造で書くと「社会課題 × メタ認知 × 成長産業市場」になります。
この「メタ認知」が入っているのが、個人的にはかなり重要だと思いました。課題を課題として扱っている限り、それは予算とボランティアの話になります。視点を変えて成長市場に接続した瞬間に、事業と資本の話になる。この変換が今回のイベントの主題でした。
もう一つ印象的だったのが、地域金融の位置づけです。静岡銀行・静岡フィナンシャルグループが、単発の協賛スポンサーではなく、挑戦者と地域事業者とスタートアップと行政をつなぐ常設のハブとして機能していました。地銀が地域共創の基盤そのものになる、という事例として見ると、静岡以外の地域にも応用が効く形だと思います。
異色すぎるメンバーで語った、フィジカルAIの現実

実は右手めっちゃ怪我してます
私が参加したフィジカルAIセッションは、かなり異色の組み合わせでした。(※参加といっても登壇側での参加です)
国産ロボットを開発するugo社のCSO、スウェーデンのディフェンステック企業Saabの日本カントリーマネージャー、インドや東南アジアでのベンチャー投資経を行うncubate Fundのレジェンド、そして物流大手セイノー社のコーポレートベンチャーキャピタルに関わる空手チャンピオン。そこに私が、中国のフィジカルAI、ロボット、AIハードウェア、サプライチェーンの視点を持ち込む形です。
ロボットメーカー、防衛、投資、物流、中国市場。見ている現場が全員違うので、議論は「ロボットがすごいですね」で終わりませんでした。どの現場に入るのか。どこまで自律化できるのか。誰が責任を持つのか。いつ事業になるのか。
このレターの読者の方であればもうご存知かと思いますが、改めて説明するとフィジカルAIは、生成AIのように画面の中で完結する技術ではありません。現実世界に出て、荷物を運び、人と同じ空間で動き、設備と環境と安全に向き合います。だから技術単体では判断できず、現場、保守、安全、通信、データ、責任分界まで含めて考える必要があります。この前提が全員で共有されていたので、議論が一段深いところから始められました。
中国は「デモ元年」「量産元年」を通過し、今は「データ採取元年」
私から中国の現状として話したのは、年次で段階が変わっているという整理です。