米中対立の最前線:TikTok規制問題を時系列で解説」
おはようございます。深セン在住の吉川です。今年のブームは読書であり、本棚の積読した本たちを消化していくことに快感を覚えるようになり、息の長い断捨離を行っています。
さて、先月から今月にかけてはTikTokがアメリカでどのように扱われるかについて、毎日のようにニュースが飛び交い、私自身もその動向を注視していました。中国では非常にホットな話題となっている一方で、日本ではあまり注目されていないように感じています。そこで、今回の一連のニュースがどのような経緯で進展してきたのか、時系列に沿って整理してお伝えしたいと思います。
米中貿易戦争の影——TikTok問題の起源(2018-2020年)
TikTokが世界中で急速に影響力を拡大する前から、米中間の経済関係はすでに大きな緊張を抱えていました。2018年、トランプ政権は中国からの輸入品に対して関税を引き上げ、いわゆる「貿易戦争」が本格的に始まりました。特に、米国が警戒していたのは、中国の技術力の向上でした。半導体やAI技術、さらには知的財産権を巡る争いが激化し、アメリカは中国企業の台頭を脅威と見なしていました。
2019年には、ファーウェイが5G技術を巡って世界的に強みを持ち始めると、米国は「中国企業が世界の通信インフラを掌握することでスパイ行為を容易にする恐れがある」として、同社を実質的に排除する動きに出ます。これにより、中国企業の技術が米国の国家安全保障に与える影響が大きな懸念材料となりました。この流れの中で、TikTokも「第二のファーウェイ」として注目されるようになったのです。
TikTokは、2016年に中国のByteDance社によってリリースされ、その後急速に世界中で人気を集めました。特に2019年末には、アメリカ国内で1億人を超えるユーザーを抱えるまでに成長し、特にZ世代を中心に強い文化的影響力を発揮していました。この急成長は、企業にとっては喜ばしいことですが、一方で米国政府にとっては警戒を強めるきっかけとなったのです。
2020年7月、当時のアメリカの国務長官マイク・ポンペオ氏は、TikTokやWeChatなどの中国製アプリに対して使用禁止を検討する発言をしました。この発言を受けて、トランプ大統領は同年8月6日に大統領令に署名し、45日後にTikTokのサービスを禁止するという方針を打ち出しました。その理由として、TikTokが収集する位置情報やユーザーの検索履歴、生体認証データが中国政府に渡るリスクがあるとし、さらにそのプラットフォームが中国政府のプロパガンダに利用される可能性も指摘されました。
この決定は、単に国家安全保障の問題だけではなく、2020年の大統領選挙を控えた政治的な要素も含まれていました。トランプ政権は、対中強硬姿勢を有権者にアピールすることを狙い、TikTokをターゲットにしたと考えられます。また、TikTok上で若年層によるトランプ批判の動画が拡散されていたことも、この決定の背景にあるとされています。実際、トランプ大統領が2020年6月に行ったタルサ集会では、TikTokユーザーが虚偽の予約を大量に作成し、会場を空席にするという抗議活動が起こりました。
ByteDanceはこの動きに対して、ワシントンD.C.の連邦裁判所に差し止めを求めて提訴しました。2020年9月には、カール・ニコルズ判事が大統領令が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいている範囲を超えていると判断し、TikTok禁止命令を一時的に差し止めることとなりました。これにより、ByteDanceは一時的にサービスの継続が可能となり、その後、米国企業であるウォルマートやオラクルとの間で事業売却交渉が進められました。しかし、ByteDance側はアルゴリズム技術の移転を拒否し、交渉は頓挫しました。
バイデン政権下の膠着と2023年議会公聴会(2021-2023年)
バイデン政権は2021年に発足すると、トランプ政権の対中政策を修正する意向を示しました。2021年6月、バイデン大統領はトランプ政権下で出されたTikTok禁止令を無期限に凍結する決定を下し、その後、アメリカ政府はByteDanceに対して、米国ユーザーデータを米国内で管理するよう求める交渉を続けました。
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- 禁止法成立から最高裁判決へ——2024-2025年の攻防
- TikTokを巡る国際的な影響
- デジタル主権の時代と日本への影響
- 日本への影響と今後の展開
- サービス紹介:日中間ビジネス成功のために
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