中国フィジカルAIの動きを、月ごとに追う取り組みを始めました
おはようございます。中国深セン在住の吉川です。

国慶節の連休は、恒例の家族サービス兼・専属ドライバーとして、渋滞が本格化する前から賀州・梧州・肇慶を車で走り回ってきました。走行距離は、かれこれ1,000キロほどになったのではないでしょうか。賀州ではカルスト地形の山々に囲まれ、梧州では広西チワン族自治区にありながら広東のような町の空気と、あちこちで聞こえる広東語が印象に残りました。旅の詳しい話は末尾に書いておきますので、興味のある方はぜひご覧ください。
中国フィジカルAI インテリジェンスレポートを始めました
深圳で企業や社会実装の現場を見ていると、中国のフィジカルAIをニュースの見出しだけで追う難しさを感じます。発表された技術がどこまで実装されているのか、どの企業が着実に動いているのかは、現地で話を聞き、情報を追い続けて初めて見えてくることがあります。こうした現地の動きを、企業ごとの関心に合わせて月1回届ける「中国フィジカルAI インテリジェンスレポート」を始めました。
私は普段、深圳を拠点に企業や社会実装の現場を訪ね、日本企業とのビジネスマッチングや事業開発を支援しています。中国の動きを定期的に把握したい、自社の検討に関係する企業や技術を見逃したくないというご相談をいただき、現在2社とこの取り組みを進めています。
前回作成したレポートは、Wordで100ページを超えました。ただし、ページ数を増やすことが目的ではありません。新製品の発表、資金調達、実証実験、導入事例などを集めるだけでなく、何が続いている動きなのか、どの情報が自社の検討に関係するのかを見極めるための材料を整えています。
レポートと対話で、次の判断につなげます

サービスでは、毎月1回、中国のフィジカルAIやロボティクスに関するレポートをお届けします。レポートの後には30〜60分ほどのオンラインセッションを設け、直近1か月のトレンドや注目企業を取り上げて解説します。資料の内容に沿った質疑やディスカッションのほか、特定のテーマに限らない相談の時間としても活用できます。
セッションは一方通行の説明会ではありません。事前に疑問やテーマを共有いただければ、当日の説明で優先する企業や話題を調整します。前月から何が変わったのか、何がまだ確認できていないのかを一緒に整理し、次の1か月に追うポイントまで話し合えます。レポートを社内の関係部署と共有し、検討を始めるための共通材料として使うこともできます。
追いかける情報のカテゴリーは、企業ごとに調整します。たとえば、中国からロボットをODMで調達するプロジェクトがあれば、候補企業や製品、供給体制、確認すべき条件など、検討に関係する動きを追います。次回の社内会議までに特定のカテゴリーを把握したい場合は、あらかじめ関心を共有いただき、私が日々見ている情報から関連するものを選びます。

「中国の人型ロボット全体を知りたい」という広いテーマから、「倉庫で使える移動ロボットのメーカーを調べたい」「この会社の新しい動きを継続して見てほしい」という具体的なテーマまで相談いただけます。初回の段階で調査項目が決まっている必要はありません。担当部署や検討中の製品、次回会議の時期、現在不足している情報を伺い、どの情報をどの頻度で追うと判断に役立つかを一緒に整理します。
関心テーマは途中で変わっても構いません。展示会の結果や社内での議論、検討中の案件の進捗に合わせて、扱う範囲を見直します。中国市場全体の動きをつかむ用途にも、特定の企業や製品を深く追う用途にも対応できるよう、毎月の内容を更新していきます。
発表直後には大きく見えたニュースが、その後の製品更新や導入状況を追うことで、違った意味を持つこともあります。逆に、最初は小さく見えた動きが、数か月後に重要な流れにつながる場合もあります。単発のニュースではなく、変化を継続して見ることで、企業や技術を評価する基準を一緒につくっていきたいと考えています。
11月22日〜26日、深圳のフィジカルAI視察を実施します

ロボスタとの共同企画で、2026年11月22日(日)から26日(木)まで、深圳のフィジカルAI・ヒューマノイド視察を実施します。すでに複数の方からお問い合わせをいただいており、参加申込みを含めたご相談もあります。現在、参加者を募集しています。
訪問先を一つのカテゴリーに偏らせず、ヒューマノイド本体、触覚センサーやロボットハンド、ロボット学習用データの収集、ロボットODM・製造など、開発から製造、活用までを幅広く見る構成です。深圳のロボット専門店やドローンデリバリー、ロボットコーヒーなど、街の中での技術体験も組み込んでいます。
日程の中心となる企業訪問は11月22日から25日までです。22日は深圳に集合して事前ブリーフィングと参加者交流、23日はヒューマノイドメーカーや触覚・ロボットハンド関連企業、部品・サプライヤー展示拠点を訪問する予定です。24日はロボット学習用データや動作計測に関わる企業を訪問し、ロボット専門店、ロボットアベニュー、ドローンデリバリーなども視察します。25日はロボットODM・製造企業を訪問し、13時に本体プログラムを終了する予定です。
ロボット本体だけを見て終わらないよう、手や触覚、学習用データ、ODM・製造へと視点を移し、フィジカルAIを形にする周辺技術や供給網まで見られる構成にしています。各カテゴリーを横断することで、個々の製品の特徴に加え、どこに協業や調達の接点があり得るのかも考えられる視察を目指します。 業界知識の有無にかかわらず、現場を比べながら、自社の次の打ち手を考えられる内容にしたいと思っています。
11月25日午後には希望者向けの延長プログラムを設け、華強北の電気街やロボット関連の体験拠点を訪ねます。26日は深圳国際会展中心(宝安)で開催されるCHTF(ハイテクフェア)を希望者向けに視察します。参加者の関心を事前に伺い、注目企業やブースを選んで回る予定です。訪問先や時間は企業の受け入れ状況などにより変更となる場合があります。
今回の企画は、見学して「勉強になった」で終わる会にはしたくありません。参加者の関心テーマを事前に共有し、訪問先との対話や商談の機会をつくり、今後の調達、協業、事業開発につながる視察にしたいと考えています。複数のカテゴリーを見比べながら、自社にとって次の一歩になりそうな相手や技術を探す場にする予定です。
参加を検討される方には、事前に関心のある技術や企業、解決したい課題を伺います。その内容をもとに、訪問先で確認したい問いを整理し、受け入れ側とも共有できる範囲で連携します。訪問先の一部は調整中ですが、単に説明を聞くだけでなく、参加者それぞれの事業テーマに引き寄せて考えられるよう準備を進めています。
ご関心のある方は、まずはお問い合わせください。今回の日程が合わない場合も、別の日程やテーマでの視察を個別に調整できます。
国慶節前に訪ねた賀州・梧州・肇慶
賀州は温泉の街、長寿の街として紹介される地域です。カルスト地形の山々に囲まれたのどかな場所で、地鶏の姿やカラスの声が身近に感じられました。景色の広がりも相まって、歩いていると『ドラゴンボール』の世界に入り込んだような気分になります。

中国温泉之城 世界長寿賀州(中国文化和旅游部)
梧州は広西チワン族自治区の街ですが、歩いていると広東の町を思わせる空気があり、街のあちこちで広東語が聞こえてきました。梧州市政府の紹介によると、市街地で話される言葉は粤語の広府片に属します。

西江の水運を通じて広州や香港方面と内陸を結ぶ交易の中継地でもありました。1897年の開港後、梧州は広西の商業中心地となり、1908〜1931年には梧州税関の輸出入総額が広西全体の80%を占め、広州に次ぐ西江の対外貿易港として栄えました。開港前後には海外の宣教団も進出し、1896年には浸信会・宣道会・循道会が教会を設け、1898年にはカトリック教会も建てられています。交易や宣教の往来が重なり、広西にありながら広東文化の色が濃い町になったのだと感じました。
梧州の歴史・文化(梧州市人民政府)
梧州では、旧市街に続く騎楼(チーロウ)の建物が印象に残りました。1階の店先を奥に引いて歩行者用の回廊をつくり、上の階を住居などに使う建築です。日差しや雨を避けるだけでなく、洪水が多かった梧州では、水門や船をつなぐ金具も備えられていました。シンガポールやマレーシアのショップハウスとも重なる街並みに、川や海を越えて受け継がれた文化を感じました。
最後に訪ねた肇慶は、広東省西部にあり、想像していたより発展した街でした。1583年、イエズス会士のミケーレ・ルッジェーリとマテオ・リッチは、通訳とともにマカオを船で出て肇慶に到着しました。肇慶知府の支援を受け、ルッジェーリは中国人の友人から資金を借り、イエズス会が中国で最初に建てた教会、仙花寺の建設に着手したと伝えられています。マカオを入口に宣教の活動が中国内地へ広がっていった、その足がかりの一つが肇慶でした。

街のフードデリバリーアプリを開くとイタリア料理店がいくつか目に入り、つい歴史と結びつけたくなりました。もちろん、現在の飲食店と宣教師の歴史に直接のつながりがあるという根拠はなく、これは私の勝手な連想です。それでも、旅先で歴史を知ると、目の前の街が少し違って見えてきます。
ミケーレ・ルッジェーリ、マテオ・リッチ両神父が通訳とともにマカオを出発(澳門記憶)
賀州、梧州、肇慶を巡って改めて感じたのは、地図の上では近く見える地域にも、それぞれ異なる歴史や商流、暮らしが積み重なっているということです。中国のフィジカルAIも、ニュースの大きさだけで判断せず、現地で何が起き、誰の課題に結びついているのかを追い続けたいと思います。
筆者プロフィール
吉川真人。株式会社ロボットワークス代表取締役。中国・深圳を拠点に、中国のロボティクス、フィジカルAI、AIハードウェアを専門として、日本企業向けに現地市場調査、企業視察、技術マッチング、PoC・導入検討、新規事業開発を支援しています。元TBS海外特派員。大学客員教員としても活動し、中国の技術・産業動向を現地の一次情報と事業の視点から発信しています。
株式会社ロボットワークスWebサイト https://www.robot-works.jp/
Newsletter「中国ビジネストレンド」 https://china-biz-trend.theletter.jp/
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