中国のスマート工場はどこまで進んだ?HONORとUBTECHから見えた製造業の変化
おはようございます。深セン在住の吉川です。
娘も早いもので1歳8ヶ月になりました。なかなか言葉を話さないなと思っていたら、最近は突然おしゃべりが増えてきました。正直、何を言っているのか分からないことも多いのですが、本人は一生懸命に何かを伝えようとしています。
一方で、いわゆるイヤイヤ期に入ったのか、お母さんにべったりで、お父さんは外に遊びに行くとき以外、少々煙たがられる存在になってきました(笑)。子育ては奥が深くて面白いものですが、ベビーシッターさんがいないと家庭が回らないという我が家の脆さも感じる日々です。もう少しスマートに子育てができればいいのですが。
さて、そんな「スマート」という言葉から少々強引につなげますが(笑)、今週は中国のスマートファクトリー事情についてお話しします。
このたび、日中経済協会様のオンライン勉強会で、中国のスマートファクトリーやロボティクスについて講師を務めることになりました。その準備で中国の製造業を改めて調べているのですが、なかなか興味深い動きが見えてきました。
今回はその一部を、専門知識がなくても理解できるようにご紹介したいと思います。
そもそもスマートファクトリーとは何なのか?
スマートファクトリーとは、簡単に言えば、工場内の設備や生産工程をデータでつなぎ、その情報を活用して生産性や品質を継続的に改善する仕組みを持つ工場のことです。
スマートファクトリーと聞くと、ロボットが大量に並び、人間がほとんどいない無人工場を想像する方も多いかもしれません。しかし、必ずしも無人化されている必要はありませんし、すべての工程にAIを導入する必要もありません。
例えば、従来の自動化工場でも、産業用ロボットは決められた作業を正確に繰り返します。ただし、部品が不足したり設備が故障したりすると、人間が状況を確認して対応する必要があります。生産設備と倉庫のシステムが連携していなければ、部品の在庫を手作業で確認することもあるでしょう。

一方、スマートファクトリーでは、生産設備の稼働状況、部品の在庫、生産計画、品質検査の結果などをデータで管理します。例えば、ある設備が停止した場合、どこで問題が発生したのかを把握し、ほかの設備の稼働状況や部品の在庫を確認しながら、生産計画の変更を判断できるようになります。
ここで重要になるのが、MES(製造実行システム)やWMS(倉庫管理システム)といったソフトウェアです。これらが工場の設備と連携することで、製造現場で起きていることを把握し、必要な指示を出し、その結果を記録できるようになります。
つまり、従来の自動化が「人間の作業を機械に任せること」だとすれば、スマートファクトリーは「工場全体をデータでつなぎ、効率よく運営すること」だと考えると分かりやすいでしょう。
ちなみに、中国では「ダークファクトリー(黑灯工厂)」という言葉もよく登場します。これは人が生産現場に常駐しなくても機械が動き続ける、高度に無人化された工場・生産ラインを指す言葉です。照明をつけなくても生産できることが名前の由来で、英語では「Lights-out factory」とも呼ばれます。
両者は似ていますが、重視するものが違います。ダークファクトリーは人がいなくても生産できるかという無人化の程度に重点があり、スマートファクトリーは設備や情報がつながり、工場全体を改善できるかに重点があります。高度に無人化された工場でもシステム間の連携が弱いことはあり、逆に人が多数働いていても高度なスマートファクトリーは成立します。無人化とスマート化を同じ指標で測らないことが大切です。
中国政府が定める「4段階」のスマート工場
中国では、このスマート化の成熟度を制度として段階的に引き上げています。中国工業情報化部など6部門が2026年7月に公表した「智能工厂梯度培育要素条件(2026年版)」では、スマート工場を「基礎級」「先進級」「卓越級」「領航級」の4段階に分類しています。
基礎級は、重要設備のデータを取得し、主要工程を自動化するなど、デジタル化の土台を整える段階です。
先進級では、製造、倉庫、設備保全、経営管理などの情報をつなぎ、工場全体で連携して運用することが求められます。ここまでは、データを「見える化」し、「つなぐ」ための取り組みが中心です。
さらに卓越級では、AIを複数の業務場面で組み合わせ、生産計画の動的な最適化、設備の予知保全、品質改善などを進めることが求められます。国内同業界のトップ水準を目指す等級です。
最上位の領航級は、AIエージェントやデジタルツインなどを深く活用して、新しい生産方式を生み出し、その仕組みを他の工場にも展開できる世界トップ水準のモデルを目指します。

特に興味深いのは、2026年版の評価基準に卓越級は「AI技術を活用するシーンの割合が30%以上」、領航級は「60%以上」という条件が明記されていることです。ただし、これは「生産工程の30%や60%が無人化された」という意味ではありません。AIを使う業務・活用シーンの割合に関する指標であり、ロボットの台数や自動化率とは別のものです。
また、同じ基準では、別の国家標準に基づく「智能製造能力成熟度」について、基礎級・先進級は2級以上、卓越級は3級以上、領航級は4級以上と定めています。こちらの成熟度レベルとスマート工場の4つの等級も、同じ言葉に見えて別の評価軸です。
中国工業情報化部が2026年7月に示した整備・育成実績では、基礎級が5万6,000カ所以上、先進級が9,000カ所以上、卓越級が500カ所以上、領航級が15カ所に達しました。中国政府が目指しているのは、単にロボットの多い工場を増やすことではなく、工場のデータ活用からAIによる高度な最適化へ、製造業全体の水準を引き上げることだと分かります。なお、ダークファクトリーはこの4段階の独立した公式等級ではありません。
では、実際の中国企業はどのような工場を作っているのでしょうか。
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